数Ⅱの恒等式について

個別指導塾・学習空間,八千代大和田教室・四街道東教室の小西です.今回誤植等多いかもしれませんのでご了承下さい.間違ってたらコメントでお願いします.

今回は数学Ⅱの恒等式について書きます.大学初年度レベルの内容が入ってきますし,全部最初から説明する気も更々ないので分かんなかったら飛ばして下さい.まず恒等式の定義から述べましょう.

<定義>
文字$x$を含む等式において,$x$にどんな値を代入しても等式が成立するとき,この等式を文字$x$についての恒等式という.

恒等式と方程式の違いを良く分かっていらっしゃらない方が多いのですが,ようは方程式は特定の値でしか成り立たない式,恒等式は任意の値で成り立つ式ということですね.文字通り恒(つね)に等しい式です.

<例1>
\[x^2-1=0\]
という等式は$x=\pm 1のときにしか成立しないから方程式であるが,$
\[x^2-1=(x+1)(x-1)\]
は$xにいかなる値を(虚数でさえも!)代入しても成立するので恒等式である.$

上の例から分かるように展開や因数分解という操作は式の恒等性を崩しません.数学Ⅱでは次のような問題でよく出てきます.

<例2>
\[a(x-1)(x-2)+b(x-2)(x-3)+c(x-3)(x-1)=x^2+1 \cdots ①\]
が恒等式となるための定数$a,b,c$ の値を述べよ.

まぁ典型的な問題ですね.数Ⅱが終わってる人なら出来ると思います.後でちゃんと証明しますが,両辺の式の「形が」同じであれば恒等式となります.つまり,与えられた式①を変形(左辺を展開)して
\[(a+b+c)x^2-(3a+5b+4c)x+(2a+6b+3c)=x^2+1 \cdots ①’\]
とします.ここで「式の形が等しい」ということは両辺の$x$の項の係数がすべて等しいことですので,

\begin{array}{l}
a+b+c=1\\
3a+5b+4c=0\\
2a+6b+3c=1
\end{array}

より
$a=5,b=1,c=-5$ ・・・ (答)

となって答が求まります.この解法を係数比較法(だったっけ?)と言います.

高校数学においてもう一つ大事な考え方があります.それが数値代入法(未定係数法)です.
恒等式というのはどんな値を代入しても成立する式のことです.ということは具体的に$x=1$だの$x=2$だのという値を代入しても等式が成立していないといけないわけです.そこで①に$x=1$,$x=2$,$x=3$をそれぞれ代入すると,
\[b(-1)(-2)=2\iff b=1\]
\[c(-1)(+1)=5\iff c=-5\]
\[a(+2)(+1)=10\iff a=5\]
となって一瞬で答が出ます.しかしながらここまでの議論では

\[x=1,2,3のときにのみ等式が成立するという保証しかない\]

ことになります.つまり「求める$a,b,c$ の値は分からないけど<存在するとしたら>$a=5,b=1,c=-5$ しかないよ」と言っているわけです.ですのでここで得られた値を①に代入してホントに①が恒等式になるのかをキチンと確かめなければなりません.この辺の必要条件だの十分条件だのの議論が難しくて数学が嫌いになっちゃう人が多いのですがちゃんと考えれば大したことはありません.

しかし実は次の大事な定理があります.

<定理:未定係数法の原理>
$f(x),g(x)$ が高々$n-1$ 次の整式であるとき,以下の3つは同値.

(1) $f(x)=g(x)$ が恒等的に成り立つ.

(2) $f(x),g(x)$ の各次数の係数が一致する.

(3) 相違なる$n$ 個の値$x_i(1\le i \le n)$ たちに関して$f(x_i)=g(x_i)$ が成り立つ.

上の定理によると,例2であれば,両辺は高々2次式ですので異なる3個の$x$の値について調べれば必要十分だよと言うわけです.つまり数値代入法の解法において,逆を確かめる必要がないということですね.これは助かります.

さて,証明についてですが(1)$ \Longleftrightarrow$ (2)と(2)$\Longrightarrow$ (3)は簡単にわかると思います.ですので問題は$(3) \Longrightarrow (2)$を示すことです.そこで次の補題を述べておきます.

(注意)ここから先は18禁です.

<補題:Vandermondeの行列式>
\begin{eqnarray*}
\begin{vmatrix}
1& x_1& {x^2_1}& \cdots& x^{n-1}_1\\\\
1& x_2& {x^2_2}& \cdots& x^{n-1}_2\\\\
\vdots& \vdots& \vdots& \vdots& \vdots\\\\
1& x_n& {x^2_n}& \cdots& x^{n-1}_n\\
\end{vmatrix}
=\prod^{}_{1\le i\le j\le n} (x_j-x_i)
\end{eqnarray*}

証明は面倒なのでパスです.線形代数の本なら恐らくだいたい載っているかと思います.新課程の人で行列やったことないって人は行列やってから見て下さい.

さて,では
\begin{eqnarray*}
f(x)&=&a_0+a_1x+a_2x^2+\cdots +a_{n-1}x^{n-1}\\
g(x)&=&b_0+b_1x+b_2x^2+\cdots +b_{n-1}x^{n-1}
\end{eqnarray*}
とおき,(3)を仮定します.相違なる$n$ 個の値$x_i(1\le i \le n)$ たちに関して$f(x_i)=g(x_i)$ が成り立つ,すなわち以下が成り立つとします.

\begin{eqnarray*}
a_0+a_1x_1+a_2x_1^2+\cdots +a_{n-1}x_1^{n-1}&=& b_0+b_1x_1+b_2x_1^2+\cdots +b_{n-1}x_1^{n-1}\\
a_0+a_1x_2+a_2x_2^2+\cdots +a_{n-1}x_2^{n-1}&=& b_0+b_1x_2+b_2x_2^2+\cdots +b_{n-1}x_2^{n-1}\\
&\vdots&\\
a_0+a_1x_n+a_2x_n^2+\cdots +a_{n-1}x_n^{n-1}&=&b_0+b_1x_n+b_2x_n^2+\cdots +b_{n-1}x_n^{n-1}\\
\end{eqnarray*}

$a_k-b_k=A_k$とおけば上の連立方程式は

\begin{eqnarray*}
A_0+A_1x_1+A_2x^2_1+\cdots +A_{n-1}x^{n-1}_1=0\\
A_0+A_1x_2+A_2x^2_2+\cdots +A_{n-1}x^{n-1}_2=0\\
\vdots             \\
A_0+A_1x_n+A_2x^2_n+\cdots +A_{n-1}x^{n-1}_n=0\\
\end{eqnarray*}

これを行列を用いて表すと

\begin{eqnarray*}
\begin{pmatrix}
1& x_1& {x^2_1}& \cdots& x^{n-1}_1\\\\
1& x_2& {x^2_2}& \cdots& x^{n-1}_2\\\\
\vdots& \vdots& \vdots& \vdots& \vdots\\\\
1& x_n& {x^2_n}& \cdots& x^{n-1}_n\\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
A_0\\\\ A_1\\\\ \vdots\\\\ A_{n-1}
\end{pmatrix}
=O \cdots (★)
\end{eqnarray*}

であり,ここで

\begin{eqnarray*}
\begin{pmatrix}
1& x_1& {x^2_1}& \cdots& x^{n-1}_1\\\\
1& x_2& {x^2_2}& \cdots& x^{n-1}_2\\\\
\vdots& \vdots& \vdots& \vdots& \vdots\\\\
1& x_n& {x^2_n}& \cdots& x^{n-1}_n\\
\end{pmatrix}
=\mathbb{X},
\begin{pmatrix}
A_0\\\\ A_1\\\\ \vdots\\\\ A_{n-1}
\end{pmatrix}
=\mathbb{A}
\end{eqnarray*}

とおくと(★)は

\[\mathbb{XA}=O \cdots(☆)\]

となる.ここで補題より,
\[|\mathbb{X}|=\prod^{}_{1\le i\le j\le n} (x_j-x_i)\]
であり,すべての$i,j$ に対して$x_j\neq x_i$ であるから,$|\mathbb{X}|\neq 0.$
従って$\mathbb{X}$ の逆行列$\mathbb{X}^{-1}$ が存在するので,それを(☆)の両辺に左からかけると
\[\mathbb{X}^{-1}\mathbb{X}\mathbb{A}=\mathbb{X}^{-1}O \iff \mathbb{A}=O\]
となる.これは$A_{k}=0(0\le k\le n-1)$ ,すなわち$a_k=b_k$ を意味し,(2)を得る.(証明終)

こんな感じです.これで証明できたので,これからは安心して数値代入法を使っていいわけですね.たまには普通の数学のお話でした.

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