明けましておめでとうございます。学習空間
八千代台教室・習志野藤崎教室の高橋です。
ちょっと前に、英語関係の本を読んでいたら「面白いこと」が書いてありました。 要約すると以下のようなことです。
動詞を現在形で使う際は、主語が三人称単数であれば語末に -s をつける。これは現在形の動詞が「繰り返し行われる習慣」を表すので、「動詞を複数形」にしたものである。ではなぜ、主語が複数形の時は -sをつけないか、それは「主語が複数」ということは同時に「動作が複数あること」も表し、わざわざ –s を付けなくても「動詞の複数形」であることが伝わるからだ。
!!??!とは思いましたが、冷静に考えることにしてみました。確かに、こんな教え方は中学校では絶対していませんし、生徒が「動詞の複数形」なんて言い出したら、やっぱり大変です。でも、一つの説明の仕方、説明の可能性として、こういうものを頭ごなしに排除するべきではありません。
まず、納得できる点を挙げます。
1.動詞の現在形は「繰り返し行われる習慣」を表す。これは高校英語ではよく知られていることです。「現在形」という名前ですが、「今だけ○○する」ではなく、その真意は「過去も現在も未来もいつも○○する」です。そしてこの理由から -s は動詞の複数形である。ふむふむ、確かにそう言えなくもない。
2.「主語が複数形」ならば、その時点で「動作」が複数あることは明らかだから、わざわざ –s を付けなくてもいい。これも一般動詞の疑問文や否定文を考えれば理解はできます。「前に”did” って出てきたら、それだけで過去の話だってわかるから後ろの動詞は過去形にしなくていい」ってやつです。 ”does” の場合もそうでしたよね。また、疑問文に対して答える際は ”Do you play tennis? – Yes, I do.” のように、返答の文ではplay tennis をdoにまとめてしまうのが普通です。英語はエコ志向な言語でして、前に出てきた語から得られた情報があれば、後ろで同じ情報を繰り返さないのです。
おや??なにやら、だんだん説得力が出てきましたね。
とここで、予想される反論もあげましょう。
Q. じゃあなぜ、you の時と I の時は現在形動詞に -s を付けないの?単数じゃん?
以下はあくまで私の想像ですが、その理由を書きたいと思います。
youに関しては比較的簡単に説明できます。というのも、”you”はもともと「二人称複数」を表す語だったからです。「二人称単数」を表すには ”thou” という語が別にありました。ところが、ある事情から、相手が一人の場合でもyouを使うようになったのです。実は昔イギリスの国王は自分のことを ” I ” ではなく ”we” と言っていました。この”we” の用法は ”Royal We” と呼ばれています。
理由は諸説ありますが、私はイギリスの国王は何かをするときに議会の承認を得なければならなかったことが関係していたと思います(イギリスでは1215年以降、マグナカルタによって王権が制限されましたから)。だとすれば、イギリス国王が自分一人のことを ”we” と言いたくなる気持ちもわかりますね。「ちゃんと議会のみんなも俺に賛成してるんだ!!」って気持ちですかね。そんなわけで、対応する二人称の呼びかけ ”you” も本来は複数形なのに、単数相手(もちろんこれは「国王」です)に使うようになり、その名残が現在も残ってるのです。その証拠に you のbe動詞は are です。まとめると、you はもともと複数形だから動詞に -sを付けない。
では、I はどうなのか。これも想像の域を出ませんが、きっとイギリスの国王の歴史に関係していると思います。英語史の研究では、一人称単数の現在形動詞が今の形になったのは16世紀初頭だということがわかっています。これはちょうどドイツでルターが宗教改革をし、その波がヨーロッパ中に広まった時期です。イギリスはもともとカトリックの国ですが、当時の国王ヘンリ8世は、自分の権力を高めるために、カトリックとプロテスタントを強引に合体させ「イギリス国教会」を作りました。これによりイギリス国王を頂点とするキリスト教派が成立すると、国民は一気に王の権力の偉大さに圧倒されます(本当に偉大なのは国王ではなくその後ろ盾であるキリスト教なんですけどネ)。
イギリス国王が自分のことを ”we” と呼んでいたことはすでに述べましたが、イギリス国民も真似をして、「自分の行動は多くの人に支持されているんだ」感を出したくなったのでしょう。しかし、だからと言って自分一人なのに ”we” を使ったら、国王から国家反逆罪を言い渡され処刑されてしまいます。だから、言葉の上ではあくまで ” I ” のままにしておいたのではないでしょうか。
以上私の想像ですが、I とyou に-sがつかない理由を書いてみました。長くなりましたね。繰り返しますが、冒頭に述べたような説明は、普通学校では「間違い」とされています。なので、授業やテストでは絶対に真似をしないでくださいネ。でも個人的には、言葉なんてどうせ変わっていきますし、従って文法だって100%の正しさなんてありません。正しさを求めるよりも、「この文法が正しかったとしたら、こういう英語の世界が見えてくるんじゃないか」という楽しみを大切にしたいと思います。
ではまた~
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